研究概要 |
本研究では,中国中山間地域で深刻な耕作放棄地問題を抱える島根県大田地域および岡山県有漢町において山間地域における農地管理問題の実態調査をおこなった。また,大分県,熊本県の阿蘇山裾野を活用した入会牧野管理における問題点の調査をおこなった。以上の調査結果から,本年度は,下記の4項目について研究を進めた。 1.耕作放棄地の将来的予測シミュレーションモデル作成をおこなうため,中国地域の全市区町村を対象に耕作放棄の要因分析をおこなった。これをもとに,耕作放棄の要因構造の類型化をおこなった。この成果をもとに,耕作放棄構造モデル構築に向け作業を進めている。 2.粗放的土地利用の一形態である農林地の放牧利用が,中山間地域の肉用牛繁殖経営の飼養技術に及ぼす影響を解明するとともに,繁殖経営の飼料自給率向上や収益性改善の効果を検討した。また,粗放的土地利用の普及発展を図るため,里地の放牧利用技術に関わる「家畜の放牧馴致」,「放牧施設整備と安全対策」,「家畜衛生と家畜生産」,「草地の維持管理」,「他の営農への活用」,「地域農業・社会への貢献」について放牧技術診断票を策定した。 3.中山間地域の農家を対象に,各農作業ごとの身体的負担度に関してアンケート調査を行い,身体的負担度の大きな農作業工程と耕作放棄との関係について検討を行った。 4.大分県竹田直入地域,および熊本県阿蘇地域における肉用牛繁殖経営のヒアリング調査を基に,放牧が経営に及ぼす効果を明らかにするために,繁殖経営の営農類型モデルの構築に取りかかった。具体的には,技術指標,経営資源として月毎の労働時間・放牧地の牧養力の推計を行った。今後は,放牧子牛の価格の実態を明らかにすることが,残された課題である。
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