研究課題/領域番号 |
15380154
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
吉岡 祥充 高知大学, 人文学部, 教授 (30210652)
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研究分担者 |
飯國 芳明 高知大学, 人文学部, 教授 (40184337)
深見 公雄 高知大学, 農学部, 教授 (30181241)
山岡 耕作 高知大学, 農学部, 教授 (20200587)
三浦 大介 高知大学, 人文学部, 助教授 (30294820)
新保 輝幸 高知大学, 人文学部, 助教授 (60274354)
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キーワード | コモンズ / 共同体 / 入会林野 / 入会 / 入会権 / 総有 / 牧野 |
研究概要 |
本年度は、高知県柏島において地先水面の入会利用およびダイビング等の観光利用の実態、島根県三瓶および熊本県阿蘇において牧野入会の実態について、共同調査とそれによって確認された実態に関する検討会を行い、別途平行して最近のコモンズ論および法社会学における入会権理論に関する研究会も行った。さらに研究分担者単独でも、高橋佳孝氏(近畿中国四国農業センター研究員)は、阿蘇群阿蘇町・一の宮町・熊本大学農学部および北海道稚内市・北海道大学において、牧野管理・利用の新技術と自然との共生に関する実態調査と研究交流を行い、飯国芳明氏は、本共同研究のフィールドである三瓶牧野の入会と環境保全の問題について広島大学において研究報告を行っている。以上のような本年度の研究によって、各調査フィールドにおける土地空間の利用実態が次第に明らかになってきだだけでなく、ある意味で当然のことであるが、各地域によって、伝統的入会集団の変容に大きな違いがあることが確認できた。すなわち、柏島のようにかなり強固に伝統的な入会集団が維持されている地域と、三瓶のように伝統的な入会集団が形式的には維持されているもののその衰退が激しくその実態が変化している地域(さらに小集落ごとにも違いが見られるが)、また阿蘇のように伝統的な入会集団の内部から内発的な変化と新たな発展が生じている地域などの違いが見られる。そしてそのような違いが、各地域における土地空間利用のコントロールのあり方にも大きな違いをもたらしてることが確認できた。また理論的な面では、最近精力的に展開されているコモンズ論について、そこにおける「公」「共」「私」という分析枠組みの有効性を明らかにするためには、近代における「公」と「私」の概念をどのようなものとして理解するか、それとの関連でコモンズ論のキー概念である「共」の概念がいかなる内容を有するかという点がなお曖昧であり、我々としても、これを地域の土地空間利用とそれを規定する地域社会や集団のあり方を分析するための道具概念として利用するにはより社会科学的で厳密な概念規定を要するという点が確認された。 なお次年度は、以上の知見をベースに、調査フィールドにおける資源管理ルールの内容を詳細かつ具体的に調査するとともに、そこにおける資源管理ルールを環境との調和などの現代的課題に即して再構築する可能性を探るため、20世紀にコモンズのオープンスペース化が進んだイギリスの実態調査、およびコモンズ論や入会権理論の批判的検討も進める予定である。
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