研究分担者 |
飯國 芳明 高知大学, 黒潮圏海洋科学研究科, 教授 (40184337)
深見 公雄 高知大学, 黒潮圏海洋科学研究科, 教授 (30181241)
山岡 耕作 高知大学, 黒潮圏海洋科学研究科, 教授 (20200587)
新保 輝幸 高知大学, 黒潮圏海洋科学研究科, 助教授 (60274354)
三浦 大介 神奈川大学, 法学部, 助教授 (30294820)
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研究概要 |
本年度は、前年度に継続して高知県柏島においてダイビング等の観光利用の実態および漁業協同組合を中心とした海面利用の実態についての調査に加えて、徳島県三好郡山城町を中心とする塩塚高原の自然環境および入会利用の実態に関する調査を2回にわたって行った。またこれらの実態調査に平行して、前年度に調査を行った阿蘇の牧野入会に関する既存のコモンズ論および法学的入会権論についても批判的検討を開始した。また研究分担者の飯国芳明は、コモンズの管理主体の問題に関連して、学会報告(Kanak Saharia and Y.Iiguni "The Role of Social Capital in Endogenous Development", The Association for Regional Agriculture and Forestry Economics, the University of Shiga Prefecture University, Hikone, October, 2004.)を行っており、次年度より研究分担者として参加予定の松本充郎もコモンズとしての河川管理をめぐってタイで学会報告(An Introductory Remark on Local Governance of River Basins- Legal Perspective, presentation at Interdisciplinary Workshop on Multi-scale Governance of Forests, Village and Water in the Upper Ping River Basin, Northern Thailand (Chiang Mai, Thailand, March 8th,2005))を行った。 以上のような前年度と本年度の研究によって、柏島(高知)、三瓶(島根)、阿蘇(熊本)、塩塚(徳島)という各調査フィールドそれぞれにおいて、コモンズの現状には大きな違いが見られることが明らかとなったが、阿蘇を除いては、利用実態や管理組織のあり方など様々の点に違いが見られるものの、全般的に地域におけるコモンズの管理主体の弱体化と利用・管理のレベル低下とそれにともなう自然の荒廃が確認され、コモンズの再生の必要性と困難性が確認された。このような現実を踏まえた理論面での研究では、コモンズ論と呼ばれる一連の議論についても、コモンズの概念に共通性はなく、それが社会関係であるのか自然実態を指すのか、ローカルなものを指すのかグローバルなものを含めるかなどの違いがあり、また法的な意味での所有関係の問題とより実体的な人間と自然の物質代謝関係を示す所有の問題との概念規定上の混乱も見られること、したがって、本研究の目的である地域における環境適合的な土地利用の実現という観点から社会学や経済学におけるコモンズ論の主要な研究を個別的に精密な批判的分析を要することが確認された。また法学的な入会権論についても、それらは戦後に進行した入会権の解体といわれる状況を前提に家族経営的農業を補完するものとしての林野の入会利用を保障することを課題としていたことから、環境的公的な土地利用や資源の持続的利用といった現代的問題意識の下にその有効性や問題点を再検討する必要性があることが確認された。 なお次年度は、以上のような課題を意識しつつ、調査フィールドにおける資源管理ルールの内容を類型的に整理し、地域における共同体的土地空間利用の実態を把握するとともに、そこにおける資源管理ルールを環境との調和などの現代的課題に即して再構築する可能性を探るため、コモンズ論や入会権理論など既存の理論に関する批判的検討を中心に進め、さらに共同研究として新たな理論形成のための理論的枠組みを模索していく予定である。
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