研究概要 |
本年度では,閉鎖性水域における水環境要素の動態特性の把握とその変動予測を目的として,湖沼での現地観測,室内による水理実験ならびに生態系モデルの構築を行った. 1)鳥取県湖山池での現地観測 平成15年6月〜11月に,湖山池最深部において水質調査,微気象観ならびに植物プランクトン調査を実施した.その結果,7〜8月では水温日成層が形成され,10〜11月では塩分差に起因する密度成層が発達し,湖底付近で貧酸素化・無酸素化が生じた.湖底付近では,DOはウェダバーン数と良好な負の相関を示し,ウェダバーン数が3を超えるとDOが低下することが明らかになった.また、TN, TP,クロロフィルaの値はいずれも8月にピークを示し,この時期に藍藻類のサヤユレモ属の異常増殖によりアオコが発生した.さらに,植物プランクトンの属別割合から求めた多様性指数により水質汚濁の程度を評価した結果,8月と10月の水環境が最も悪化していた. 2)生態系モデルの構築 有明海沿岸低平水田地帯のクリークにおける夏期の水質動態の予測を目的として,硝酸態,亜硝酸態,アンモニア態,有機態の各態窒素,無機態リン,有機態リンを指標とした生態系モデルを構築した.既往の文献と対象地区の水質の実測データから現況の水質動態を再現可能なモデルパラメータを推定し,文献等から推定できないパラメータは,遺伝的アルゴリズムによって水質変動の再現誤差が最小となるように最適値探索を行った.その結果,得られた生態系モデルによりクリークで観測された夏期灌漑期における水質観測値を良好に再現することができた. 3)室内水理実験 水草の水面占有率が閉鎖性密度成層水域における吹送流の乱流構造に及ぼす影響について検討した.乱流エネルギー収支の鉛直構造は,水草の占有率の増加にともない,水草のない場合のそれに比べて,とくに水面および密度界面近傍で差異が顕著になることを明らかにした.
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