研究概要 |
まず,作物の葉を測定対象に実験室レベルで中赤外分光スペクトルと蛍光X線スペクトルを取得するための実験を行った。赤外分光スペクトル測定には,ATRアクセサリーを付属したFT-IRを使用した.IREにはZnSeを用いた。蛍光X線分装置には,島津製作所社製のエネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いた。圃場実験用には,今回新たに購入したポータブル型FT-IR (SensIR TECHNOLOGIE社製Travel IR)を用いた。IREには赤外領域に吸収を持たないATR結晶にダイヤモンドを用いた。 また,葉色の計測のために色彩画像計測の原器にあたる正しい色彩画像を作成できるシステムを再構築した。試作したシステムはデジタルカメラ、液晶ディスプレイ(ColorEdgeCG18ナナオ社製)、銀塩写真プリンター(PICTROGRAPHY3500富士写真フィルム社製)、計算機部(Power Mac G4 APPLE社製)から成り立っており、カラーマッチングが可能である。画像取得部分は,デジタルカメラと照明用光源から成り立っている。光源には色温度5500K,演色性91のトルーライト蛍光灯を採用した.イオン計測の標準法としてイオンクロマトグラフ法を用い、生体の栄養状態の指標となる陽イオン(K+, Ca2+, Mg2+)および陰イオン(NO3-, PO4-, SO42-)の検量線を作成した。 FT-IRと蛍光X線を用いた実験での試料にはモデル葉とトマト葉を用いた.モデル葉は調整したイオン混合溶液(P, K, Ca)をろ紙に滴下し,数時間乾燥させたものと定義した。実験の結果、中赤外分光スペクトルからはタンパク態Nと硝酸態Nが検出可能なこと、蛍光X線スペクトルからは植物体の栄養診断に用いられるP, K, Caなどの陽イオン成分の分析が行えることが判明した。さらに備え付けタイプのFT-IRと携帯用のFT-IRのどちらにおいても十分な計測精度が得られることが確認された。新たに構築した色彩画像解析システムでは、緑領域を含む広い色彩領域でのカラーマッチングがうまく行えることが確認できた。最後に、JAVAアプレット形式での色彩・スペクトル解析ツールのプロトタイプも試作した。
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