研究概要 |
本研究はインバースモデル(逆解析モデル)によって大気二酸化炭素濃度観測値から陸域二酸化炭素ソース/シンクをメソスケールでマッピングすることを目的とし,その手法開発をおこなっている。平成15年度はまず,全球および大陸スケールにおける既往研究の手法を分析し,メソスケールへの適用における課題を抽出した。大気二酸化炭素濃度観測については,1ppm以下の分解能で定期的に校正されたガスアナライザによるインターバル1時間の測定が必要なこと,気象モデルによる気体拡散シミュレーションについては時空間分解能1時間および数kmで海陸風・山谷風など局地循環と混合層厚変化を再現でき,また観測値や客観解析データで補正をおこなう4次元同化が必須であることが示された。インバースモデルについて,遺伝的アルゴリズム(GA)はソース/シンクから大気濃度への写像の形を選ばず,初期値依存性が低いことから有用であるが,土地利用ごとの強度や周期変化を仮定することによって推定対象の情報量を圧縮する必要があることがわかった。次に,メソスケール気象モデルによって大気二酸化炭素濃度の時空間的変動を再現できるかを,数値実験によって検証した。メソスケールモデル(MM5)によって2002年8月の近畿地方の風場を計算し,領域内に任意に与えたソースから発生する二酸化炭素による領域内の濃度分布時系列を計算した。あるソース領域に含まる観測地点でも,他のソースを起源とする二酸化炭素による濃度変動が検出できたことから,メソスケールにおけるインバースモデルによるソース/シンク推定の可能性が確認された。最後に,赤外線ガスアナライザと標準ガスによる自動校正装置を含む大気濃度観測システムを作成し,大阪府吹田市において長期連続観測を開始した。
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