研究概要 |
本研究はインバースモデルによって大気二酸化炭素濃度観測値から陸域二酸化炭素ソース/シンクをメソスケールでマッピングすることを目的とし,その手法開発をおこなう。平成16年度は,大気二酸化炭素濃度観測と遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた逆問題解析の性能評価をおこなった。まずIRGAを用い,大気二酸化炭素濃度の定点連続観測をおこなった。標準ガスを用いた高頻度キャリブレーションによって,絶対測定精度を確保できた。運用は安定しており,設置建物の停電を除き完全な連続観測を実施できた。次に逆問題解析によるソース/シンクマッピングの性能評価をおこなった。メソ客観解析データとメソスケール気象モデルMM5を用いた濃度分布推定モデルを使用して,任意に与えた二酸化炭素ソース/シンク強度に対する二酸化炭素濃度分布の時系列を計算した。次にソース/シンク推定精度の検証をおこなうため,GAを用いて先に与えたソース/シンク分布の復元をおこなった。対象領域(130km×130km)を4または16分割しランダムに固定ソース/シンク強度を与えた問題に対し,GAは一部領域を除いてほぼ精度よくソース/シンク強度復元をおこなえた。復元精度が低かった領域は,濃度観測点に対する寄与が小さく,その領域のソース/シンク強度を変化させても観測大気濃度計算値が変化しなかった。このため,本手法は空間マッピングではなく土地利用などによってカテゴライズした対象のソース/シンク強度推定が適当であるといえる。また交叉率,変異率,個体数,評価関数の係数などのGAパラメータによる推定精度と計算時間の性能評価をおこなった。16分割問題では十分な個体数が必要であり,1個体当たり計算時間の短縮が課題となった。このため,濃度計算における時間ステップを対象地域の代表地上風速によって可変とし,計算値の発散を防止しながら計算時間を約1/4に短縮できた。
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