研究概要 |
本研究はインバースモデルによって大気二酸化炭素濃度観測値から陸域二酸化炭素ソース/シンクをメソスケールでマッピングすることを目的とし,その手法開発をおこなった。本手法は,大気二酸化炭素濃度定点連続観測,気象モデルによる流れ場および気体拡散シミュレーション,ソース/シンク強度を逆推定する遺伝的アルゴリズム(GA)から成る。赤外線ガスアナライザと標準ガスによる自動校正装置を含む大気濃度観測システムを作成し,大阪府吹田市において2004年12月〜2006年1月の期間,大気二酸化炭素濃度の長期連続観測を実施した。実問題に本手法を応用する前に,まずGAを応用した逆問題解析によるソース/シンクマッピングの性能評価をおこなった。メソ客観解析データとメソスケール気象モデルMM5を用いた大気濃度分布モデルを使用して,任意に与えた二酸化炭素ソース/シンク強度に対する大気濃度分布の時系列を計算した。次にGAを用いて,先に与えたソース/シンク分布の復元をおこなった。対象領域(126km×126km)を4または16分割しランダムに固定ソース/シンク強度を与えた問題に対し,GAは一部領域を除いてほぼ精度よくソース/シンク強度復元をおこなえた。復元精度が低かった領域は,濃度観測点に対する寄与が小さく,その領域のソース/シンク強度を変化させても観測大気濃度計算値が変化しなかった。このため,実問題に対しては空間マッピングではなく,土地利用によってカテゴライズした対象のソース/シンク強度の推定をおこなった。冬季,夏季ともに,市街地のソース強度が最も大きく,植生域は相対的に市街地よりシンク側に推定されたが,それらの絶対値は不正確であった。この原因として,大気濃度観測誤差と,計算領域外のバックグラウンド大気濃度設定の問題が考えられる。土地利用間のソース/シンク強度の大小関係や相対的な季節変化は,正しく推定できた。
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