研究概要 |
平成15年度より牛群を幼少期(初期成長期)のみ(2カ月齢〜1Oカ月齢まで)濃厚飼料(穀類)区と粗飼料(乾草)区の極端に異なる飼養環境で飼育して、その後は両区とも粗飼料(乾草)のみ給与するという方法で、初期成長期の代謝生理的インプリンティングの効果について実験を行った。10カ月齢までの発育割合はC区でR区より・も著しく高かったが、10カ月齢以降は、両区の間で同様であった。体重はC区でR区の1.3倍になった。体測値よりC区でR区よりも、特に胸幅の発育が著しく高かった。血中IGF-Iの値は、5〜22カ月齢まで、つねにC区でR区よりも有意に高かった。屠殺時の体重は、C区で471.9±42.3kg、R区で357.4±25.5kg(P<0.05)だった。胸最長筋の筋線維型構成は、両区の間でI型、IIA型およびIIB型で差異は認められなかった。筋分化制御因子及びIGF-IのmRNA発現は10カ月齢時までに有意な差異が認められたが、それ以降有意な差異は認められなかった。MyostatinのmRNA発現は,10カ月齢時にC区でR区よりも有意に高く、17カ月齢で有意差は消失し、22カ月齢時には、逆にC区で有意に低くなった。mRNA発現は,多くの因子で、インプリンティング処理期間中および処理後においてC区でR区よりも有意に高い発現を示した.C/EBPα及び脂肪酸合成酵素群では、10カ月齢時までに認められた処理区間の差異は、その後認められなくなるが、22カ月齢時に再び認められるようになった。理化学特性では、粗脂肪含量は試験区(10.3%)が対照区(6.2%)に比べ有意に高く、水分含量で低い結果となった。脂肪酸組成のうちC18:1、C18:2は試験区が対照区より有意に高く、C18:0は低い傾向を示した。SFAは対照区が高く、MUEA、US/Sは試験区が高い結果となった。官能特性では、全ての評価項目で試験区が高い平均値を示したが、両区間で有意な差は見られなかった。以上のことから、初期成長期の体質制御が粗飼料肥育における筋内の肉質に関わる遺伝子群の発現、ならびに生産された牛肉の粗脂肪含量、脂肪酸組成に影響を及ぼすことが示された。また、耕作放棄地の肉用牛放牧飼養実験も一部行った。
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