本研究は、食肉が流通段階に至る前の熟成・貯蔵期間や、ヒトが食肉を摂取した場合に生体内(消化管内)でタンパク質分解酵素の作用を受けて生成するペプチドの保健的機能の解明を目指したものである。この研究により、食肉の知られざる保健的機能の一端を明らかにし、健康的な食生活の構築に寄与する情報を提供できるものと考えている。昨年度、食肉や食肉製品の熟成・貯蔵中に、食肉タンパク質から生成する生理活性ペプチドに注目して検討を進めた。その結果、数種の生理活性ペプチドが熟成・貯蔵中に生成されることを明らかにした。本年度は、このような食肉タンパク質由来の生理活性ペプチドの特性を詳細に検討した。ここでは、特に抗酸化ペプチドとビフィズス菌増殖促進ペプチドについて得られた成果をあげることにする。食肉タンパク質由来の抗酸化ペプチドとして多くのものを同定したが、その中で2種のペンタペプチドAsp-Leu-Tyr-AlaとSer-Leu-Tyr-Alaはin vitroでのスーパーオキシド消去能が高いだけではなく、マウスにおいて顕著な抗疲労効果(強制走行実験)を示した。一方、ビフィズス菌増殖促進作用を示すペプチドとして、Glu-Leu-Metの配列をもつトリペプチドを発見した。このペプチドは、病原細菌(7菌種を検討)の増殖には全く影響がなく、選択的にビフィズス菌(Bifidobacterium属)の増殖を促進させることから、プレバイオティクスとして有望な素材と考えられる。これらの成果は食肉の潜在的な保健的機能を解明すると共に、食肉の機能性食品素材としての可能性を発掘するものと考える。
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