生殖細胞系列キメラの生殖腺中で生殖前駆細胞を分化制御し、同一ゲノムを保有するキメラニワトリを作出するための基盤研究を行った。放卵直後の横斑プリマスロック受精卵(ドナー)の胚盤葉を採取した。この胚盤葉をDMEM培地で洗浄し、余分な卵黄、卵白および血液を完全に除去した。胚盤葉の明域中央部に局在する生殖前駆細胞のみを選択的に採取精製した。この生殖前駆細胞をサイトカインを含む培養液、または、サイトカインを含まない培養液中で培養した。培養細胞をPASまたはSSEA-1で免疫組織化学染色し多能性細胞の存在の有無を確認した。サイトカイン(LIF等)を含む培養液中では多能性を保持した細胞は、培養21日前後まで存在した。一方、サイトカインを含まない培養液中では多能性細胞は培養7日前後で消失した。横斑プリマスロック受精卵中で発生する胚盤葉明域中央部由来の生殖前駆細胞をドナーとして、レシピエント胚(白色レグホン)へ顕微注入した。これらの操作胚(キメラ胚)を全胚培養系を用いて全胚培養した。ドナーおよびレシピエントの細胞由来テンプレートDNAを精製した。このDNAと雌特異的DNAプライマーを用いてPCRをおこなった。これによってドナーとレシピエントの性判別をおこなった。本年度は同一の雄ドナーと別個の雌レシピエント胚による異性細胞融合キメラ胚が2個作出された。本年度の成果を踏まえて来年度は同一ゲノム保有ニワトリ個体の作出に向け一層の研究の推進を図る。
|