鳥類キメラの生殖腺中で生殖前駆細胞の発生分化を制御し、同一ゲノムを保有するキメラニワトリを作出するための基礎的研究を行った。生殖細胞キメラの作出におけるドナーとして、放卵直後の横斑プリマスロック受精卵の胚盤葉を使用した。この胚盤葉をDMEM培地で洗浄し、余分な卵黄、卵白および血液を完全に除去した。胚盤葉の明域中央部に局在する生殖前駆細胞のみを選択的に採取精製した。生殖前駆細胞をLIF、SCF等のサイトカインを含む培養液中で3週間培養した。この培養細胞をPASまたはSSEA-1で免疫組織化学染色し多能性細胞の存在の有無を確認した。多能性細胞は、培養後も多数存在した。キメラ作出の研究においては、ドナー細胞(横斑プリマスロック)をレシピエント胚(白色レグホン)へ顕微注入しキメラ個体作出を試みた。キメラ個体を性成熟まで飼養しドナー系を用いて検定交配を試みた。この結果、確立した実験系を用いてドナー配偶子由来の個体の再生に成功した。また生殖細胞キメラの作出メカニズムを解析する実験系の構築を試みた。ドナー細胞をPKH26で染色しレシピエントの胚盤葉に移植した。このキメラ胚を培養しドナー細胞の挙動解析を試みた結果、ドナーの大部分は生殖原器に効率的に移住し、発生分化を開始することを確認した。鳥類における各品種の分子マーカ作成の研究も同時に行った。横斑プリマスロックおよび白色レグホンの細胞由来テンプレートDNAを精製した。このゲノムDNAをNotl-Mspl-Hindlllの制限酵素の組み合わせで消化した。これらのサンプルを用いてRLGSを行い品種特異的な多型を多数検出した。検出された多型は性染色体に由来するものやメチル化による多型に由来するもので有ろうと考察された。検出したDNA多型は生殖細胞キメラの分子識別マーカーとして胚発生初期から孵化後、性成熟に至まであらゆる発生、育成段階での分子識別に活用し得るものと思われた。本年度の研究によって得られた様々な新規知見を活用し来年度は同一ゲノム保有ニワトリ個体の作出に向け一層の研究の推進を図る。
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