昨年までは、ウシあるいはヒツジの下垂体からインヒビンのレセプターを分離することを試み、70kDa、44kDa及び22kDaのインヒビン結合蛋白質を検出したが、低分子の2つの蛋白質の構造解析したが、膜蛋白ではなく分泌性の蛋白質であった。70kDa蛋白質は非常に微量であったために、残念ながら構造解析にまでは至らなかった。本年度はアクチビンのレセプターを有するヒト骨髄白血病細胞K562を用いてインヒビンの結合蛋白質の精製を試みた。 先ず、精製の前にK562細胞に対してインヒビンが生理的作用を持つかどうか確認した。K562細胞はアクチビンによってヘモグロビンを産生するが、このヘモグロビンを定量的に測定する方法を開発した。アクチビンによって産生されるヘモグロビンはインヒビンやフォリスタチンによって抑制された。フォリスタチンはアクチビン結合作用があるために、アクチビン活性を中和し、ED50を抑制したが、インヒビンはアクチビンの最大反応値を抑制した。このインヒビンの抑制はアクチビンのレセプター数を抑制することを意味し、インヒビンが細胞膜上で作用していることを示唆するものである。 次に今まで明らかにされているアクチビンレセプターの細胞外部分にFc部分を発現した蛋白質をProtein Gコーティングプレートに吸着し、アクチビンとインヒビンの結合実験を行った。基地のアクチビンレセプターに対するインヒビンの結合は弱く、完全にアクチビンの作用をレセプターレベルで抑制するとは考えられなかった。 今後はK562細胞やインヒビンのレセプターの研究に適する細胞を探索し、大量培養して解析する必要がある。
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