研究課題
哺乳動物が有さない脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を新たに導入・発現させることで、動物、特にウシの脂肪に多価不和脂肪酸を豊富に含有させることを目的に、本年度は以下の研究を行った。1.ω3脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(fad3)の哺乳動物細胞における発現解析:昨年度取得したアマ幼弱種子由来からfad3 cDNAを哺乳動物内で構成的に発現させるためニワトリβ-actinプロモーターおよび発現の可視可を目的にEGFP遺伝子を連結した発現ベクター(pβ-act/FAD3/IRES/EGFP(neor))を作製した。このベクターをウシ繊維芽細胞およびマウス3T3-L1細胞に安定導入し、遺伝子導入細胞におけるαリノレン酸(18:3n-3)含量をガスクロマトグラフィーで調べた。その結果、両細胞とも野生型細胞に比べ、18:3n-3比率の上昇が観察され、植物のFAD3が動物細胞内で機能することが示された。しかしながら、上昇した割合は0.4%(野生型:0.2%)と低いことから、現在、FAD3の強発現を目的にプロモーターの変更(CAGプロモーター)およびfad3塩基配列のヒト化を検討している。2.ルシフェラーゼ発現ベクターを導入したウシ繊維芽細胞による再構築胚内での遺伝子発現:昨年度獲得したルシフェラーゼ発現ベクターを安定導入したウシ繊維芽細胞を用いて再構築胚を作製し、経時的な遺伝子発現、その発現強度および胚内での発現様式を調べた。その結果、1)細胞融合後60時間(hpf)でルシフェラーゼ(LUC+)発現した胚は胚盤胞期に発生したが、60時間以降(72および120時間)に発現した胚は発生しなかった、2)60hpfでのLUC+発現の強度とその後の発生との関係を調べたところ、強発現した胚が胚盤胞期へ高率に発生した、3)60hpfで強発現した胚の透明帯を除去し胚内の割球の発現とその後の発生との関係を調べたところ、すべての割球で発現した胚が高率に発生し、モザイク状に発現した胚はほとんど発生しなかった。以上より、ウシ再構築胚での遺伝子発現時期、強度およびその発現状況を調べることでその後の発生が予測できることが示された(ウシクローン胚の選別方法として特許出願済み)。
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J.Reprod.Dev. 51,2(印刷中)
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