ブラジキンは炎症性メディエーターとして胃腸管内在ニューロンのシグナルとして働き、内在神経の興奮性を調節することが知られている。今年度は新生ラット消化管内在ニューロンの細胞内Ca動態と細胞膜電位に対するブラジキンの作用を単一細胞レベルで検討した。 1)パッチクランプによる活動電位波形とCa結合蛋白質の局在から神経細胞を機能的に分類した。活動電位後過分極を伴う細胞(AH型神経細胞)及びカルビンジン免疫陽性細胞は全体の10%、多くの細胞は過分極を伴なわず、抗カルレチニン免疫陽性を示すS型神経細胞と同定された。 2)いずれの神経細胞においてもブラジキニンにより細胞内Ca増加反応を起こした。3)RT-PCTによりラット内在神経細胞叢にB1及びB2受容体mRNAが検出された。4)ブラジキニンによるCa増加反応はB2受容体アンタゴニストにより消失した。一方、B1アゴニストはCa増加反応を引き起こさなかった。神経細胞の殆どは抗B2受容体免疫陽性を示した。5)ブラジキニンによるCa増加反応はシクロオキシゲナーゼ抑制薬、プロスタグランジンEP1受容体遮断薬により抑制された。プロスタグランジンE2はブラジキニン反応を増強した。6)ブラジキニンは培養内在神経叢からプロスタグランジンE2放出を惹起した。7)ブラジキニンは内在神経細胞に持続的な脱分極反応を引き起こし、この脱分極はインドメサシンにより抑制された。7)ブラジキニン存在下で活動電位の発生閾値が有意に低下した。8)これらの結果より、内在神経細胞においてブラジキニンはB2受容体を介してCa増加反応を引き起こし、この反応にはブラジキニンにより放出されたプロスタグランジンが関与していることが明らかになった。また、ブラジキニンは神経細胞の電気的興奮性を増大させることが示された。
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