減数分裂厚糸期で精子形成が停止するミュータントラットについて、連鎖解析により原因遺伝子asの同定を行った。その結果、ラット第12染色体上の遺伝子FKbp6を候補遺伝子として得た。ミュータントのゲノムDNAはFKbp6の一部を欠損していること、および蛋白質の発現が抑制されていることを確認し、asはFkbp6の変異遺伝子であることを明らかにした。 FKBP6欠損ラットおよびマウスの厚糸期精母細胞の染色体を精査した結果、相同染色体の対合に異常があることが判明した。対合はシナプトネマ構造と呼ばれる蛋白質複合体により維持されるが、FKBP6はその構成因子であることを明らかにした。欠損細胞ではシナプトネマ構造が不安定となり、その結果対合に異常が発生し減数分裂が停止するものと結論づけた。 FKBP6の発現は雌雄の生殖細胞で確認されたが、減数分裂異常は雄にのみ発現する。その原因を明らかにする目的で、雄に特有な減数分裂に伴う現象であるXY染色体の不活性化についてFKBP6欠損ラットおよびマウス精巣を精査した。その結果、不活性化には著変はなく、雄に特異的な異常の発現には関与していないことが判明した。 予備的研究の結果から、asラットには血液精巣関門のバリア機能に異常があることが示された。この異常とGKbp6の関連を明らかにする目的で遺伝子破壊によるFKBP6欠損マウスのバリア機能を検索したところ、やはり異常であった。薬物投与により生殖細胞を排除した野生型精巣のバリア機能は正常であり、バリア機能の成立に生殖細胞は関与していないことが証明された。これらの結果から、FKbp6は生殖細胞のみならず体細胞でも発現し、バリア機能の成立に関与する可能性を示した。
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