研究概要 |
診断法の改善: 1.北海道の飼犬のエキノコックス・スクリーニング検査(糞便内虫卵および抗原検査)で陽性となったもの3例について,虫卵から多包条虫DNAを検出し,確定診断を行った。 2.現行のスクリーニング検査では,糞便内抗原検査の結果が陽性でも、虫卵排出前や軽度感染のため、虫卵DNAの検出が不可能な場合がある。そこで,虫卵排出前の糞便からのDNA検出について検討した。9頭の犬と2頭の猫に原頭節を投与し、感染後3週目まで経時的に採取した糞便からDNAを抽出し、PCRを行ったところ、多包条虫DNAは散発的に検出されたのみであった。しかしながら,3頭の犬に対して,感染後2週目に駆虫薬プラジカンテルを投与したところ,3頭全てで駆虫直後の糞便から多包条虫DNAが検出された。これらの結果から、駆虫と組み合わせたDNA検出の有用性が示された。 3.ザンビアにおける単包条虫流行地で犬糞便を採取し,Mathisら(論文作成中)が開発したエキノコックス属とテニア属(いずれもテニア科)を区別できるmultiplex PCRの有用性を検討した。犬116頭の糞便のうち4つからテニア科条虫卵が検出され,いずれもテニア属の虫卵であることがわかった。本調査は次年度も継続する予定である。 疫学調査: エキノコックス症感染リスクマップ作成のため,札幌市北東部を対象に,キツネの営巣地選択および冬期の足跡追跡調査を行なった。その結果,巣は,ランダムに選んだ対象地点と比較して1.河川により近く,2.住宅からより遠い場所に偏っていた。また,育児期間を通して巣を替えない家族が確認された。同地域に約2km^2の調査区を31ヶ所設定して雪上の足跡の有無を観察したところ,21ヶ所でキツネの足跡が確認された。今後は,GIS(地理情報システム)を用いて上記の結果の解析を深める予定である。
|