研究課題/領域番号 |
15380211
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤永 徹 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (50181376)
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研究分担者 |
奥村 正裕 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (80260397)
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キーワード | 犬 / 光線力学療法 / 蛍光色素 / 腫瘍 / マウス担癌モデル / BPD-MA / レーザー光線 |
研究概要 |
本研究では、890nmの吸収波長の蛍光色素であるBPD-MA(カナダQLT社より供与)を用いた光線力学療法(PDT)の小動物腫瘍治療への応用を目的に、マウス腫瘍を用いた基礎試験ならびにイヌ腫瘍治療に対する適応法と有効性を検討する基礎試験を行っている。本年度は以下の結果を得た。 1)臨床応用の対象動物である担がん犬における本薬剤の副作用の有無と体内動態を検討した。その結果、諸検査結果では血中アルカリフォスファターゼが有意に上昇したのみであった。これは本薬剤の代謝経路が胆汁中であることによるものと思われた。また、食欲・元気なども含めて身体検査に特に異常は認められないことから、本薬剤を犬の静脈内に投与しても副作用はないものと判断された。薬剤の血中濃度の半減期は、静脈内投与後8.14時間であり、35.13時間後には体内からほぼ消失した。したがって、体内からのクリアランスが速いことから、蛍光色素による光線過敏症の予防には半日程度の短時間の遮光でよいことが分かった。この成果は現在国際学術誌に投稿中である。 2)犬に発生が多い肥満細胞腫に対するPDT効果を検討するために、マウス肥満細胞腫担がんマウスに対してPDTを行ったところ、腫瘍崩壊のために、肥満細胞の持つヒスタミンによるショック死を起こすことが判明した。したがって、肥満細胞腫犬に対するPDTは、腫瘍の大半を切除後PDTを行うなど特別の考慮が必要なことが判明した。 3)犬臨床例の治療試験において、薬剤投与後3時間目の腫瘍細胞をターゲットにしたPDTと15分目の血管をターゲットとしたPDTとを比較したところ、後者では薬物の使用量が半量にもかかわらず、両者の効果に違いはないように思われた。マウスモデルでは、両者の併用はより効果が高いことが分かっている。 4)血管をターゲットにしたPDTの場合、CT検査によって腫瘍内の血管構築を前もって把握することによって、当該腫瘍に対するPDT効果をある程度予測できる可能性が示唆された。
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