研究課題
基盤研究(B)
自然発生の牛ウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)持続感染牛(PI)の臨床症状と分離されたウイルスの遺伝子亜型との関係を調べた。1991〜2005年までの間に摘発された150検体について、BVDVの主要抗原であるE2をコードする遺伝子の塩基配列を解読し、遺伝子亜型を決定した。その結果、13検体が世界的にきわめて稀な1c亜型に分類された。これらの症例には、運動障害を主徴とする中枢神経異常の症状が高率に認められ、病理解剖によって大脳に肉眼病変が認められた症例もあった。また、糖尿病併発BVDV感染牛から検出されたBVDVはすべて1a亜型に分類され、それぞれが遺伝学的に非常に近縁であり、小クラスターを形成していた。以上のことから、BVDV感染に併発する中枢神経異常および糖尿病は、特定の遺伝子亜型に属するBVDVと密接な関連性があることが示唆された。1c亜型に属するBVDVとその病態との関連性を組織学的に検索したところ、1c亜型特異的な脳内局在は確認できなかったが、1cは他の亜型のBVDVよりも高率に大脳神経細胞内で確認された。定性PCRでは、BVDV遺伝子型に関係なく各臓器からウイルス遺伝子が検出されたが、定量PCRによって各臓器局在のウイルス量の違いは確認されなかった。また、PIで高率に認められる発育不良とBVDV感染との関係を検討した。外見上ほぼ正常なPIと著しい発育不良のPIとからは同一遺伝子型のBVDVが多数検出された。そこで、PIの甲状腺を免疫組織化学的に観察したところ、発育不良PIの甲状腺に高率にBVDVが局在している証拠は得られなかった。しかしながら、発育不良PIで高率に甲状腺の低形成が認められた。これまでの本研究における検討では、BVDVPIで認められる発育不良は、ウイルスの直接作用による甲状腺機能の障害というよりも、本感染症による糖尿病発症機序と同様、宿主の免疫異常を誘導することによる二次的障害の可能性が考えられた。
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