研究概要 |
黒毛和種牛の発育不良の原因を検討した.発育不良の黒毛和種(YIH系)では,血中甲状腺ホルモン濃度が低下していたが,これは偽甲状腺機能低下であることを示した.多くの発育不良牛では,甲状腺機能低下が認められるが2次的であることを示唆した(文献1).ガスクロマトグラフィー/質量分析を用いて発育不良牛における尿の代謝プロフィル解析を行ない,オロト酸尿症の1例を検出した.また,発育不良牛は系統ごとに特徴的なプロファイルを示した.尿細管形成不全ではフェノール類化合物の増加が特徴的であった(文献2).GRF刺激後の血漿GH濃度の変化は正常対照群,発育不良群とも個体差が大きかった.発育不良群の10時間GH分泌解析では,正常対照群よりも血漿GHのベースライン濃度,ピーク振幅,AUCが高い傾向にあり,黒毛和種牛のGH分泌機能の検査法としてGRF刺激試験より有用であった(投稿中).オロト酸尿症の症例は,発育不良,虚弱,貧血,低蛋白血症を示し,尿と血清のオロト酸濃度が高く,尿にオロト酸結晶を認めた.責任酵素とされているUridine monophosphate synthaseの遺伝子異常は認められなかった(投稿中).発育不良牛の2系統(MHOとHSK)の内分泌機能を比較した.MHO系の牛はIGF-1,T3,T4およびコルチゾール濃度が低く,HSK系の牛よりも重度の内分泌不全を示した.MHO系の牛のGH分泌は,HSK系および正常牛より多い傾向にあった.MHO系の牛は高GH,汎内分泌機能低下であり,その異常はHSK系の牛よりも軽度であり,家系によって内分泌異常が異なっていた(投稿中).今後は,発育不良・虚弱の牛においてガスクロマトグラフィー/質量分析によるマススクリーニングをさらに進め,代謝異常を検出することを継続するとともに,負荷試験を用いた内分泌異常を検討する予定である.さらに,散発的に心筋異常,血液凝固異常などがあり,これらについて臨床,生化学および遺伝子の検討を行なう予定である.
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