研究分担者 |
大久保 明 マイクロ化学技術(株), 研究顧問 (20111479)
志水 勝好 筑波大学, 農林系, 講師 (40261771)
高良 真也 長崎大学, 環境科学部, 教授 (40225389)
高尾 雄二 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (20206709)
石橋 康弘 長崎大学, 共同研究交流センター, 助手 (00212928)
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研究概要 |
本研究では,干潟の保全と持続的生物生産を両立させる方策を開発することを目的として,干潟に自生する塩生植物(シチメンソウ)と耐塩性の異なる各種植物における塩ストレスに対する応答機構を植物生理学的に,また分析化学的に追求することを目的とした。特に,耐塩性因子であるグリシンベタイン(GB)の誘導合成の機構と誘導量について検討した。まず種子が海水濃度に近い塩を含む干潟で受ける塩ストレスをどのように克服しているか,を知るために発芽時の塩ストレス応答を調べた。その結果,耐塩性をもつ植物の多くは種子中にGBを蓄積していることを今回始めて見出した。発芽前はこのGBによって応答していること,発芽後は自力でGBを誘導すること,さらにGBの誘導量は耐塩性の強い品種ほど誘導量が多いこと,植物の種子形成期には種子中にGBが濃縮されることなどが分った。植物は種子→発芽→生長→成熟・種子形成の全過程においてGBを巧妙に使って環境からのストレス応答を達成していることが示された。 GBの誘導量と耐塩性の強さの関係をさらに明確にするために,オオムギ約340品種を乾燥ストレス負荷と非負荷で栽培し,両者におけるGBの誘導量をキャピラリー電気泳動法で定量した。まず耐塩性が分っている14品種についてGBを定量し,多変量解析の線形判別式を用いて判別したところ,耐塩性強と弱の品種を明瞭に判別することができた。この判別式を耐塩性未知の300品種に応用したところ,158品種が強,142品種が弱と判定できた。このことから,GB定量法が耐性品種をスクリーニングする方法として迅速・簡便な優良な方法であることが示され,今後の品種選抜への応用が期待される。また,オオムギ品種の原産地の年間降雨量とGB誘導量との関係を求めたところ,相関係数0.76を得た。このことはGB誘導はその品種が栽培されてきた地域の水環境を遺伝子のレベルで記憶しており,水ストレスに対して明確に応答していることが示された。
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