研究分担者 |
高良 真也 長崎大学, 環境科学部, 教授 (40225389)
高尾 雄二 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (20206709)
下町 多佳志 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (60249886)
長江 真樹 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (00315227)
石橋 康弘 長崎大学, 共同研究交流センター, 助手 (00212928)
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研究概要 |
平成15,16年度に引き続き,塩生植物の耐塩性因子であるグリシンベタイン(GB)の生理学的・生化学的機能を追跡するとともに,研究全体を総括した。以下に今年度の研究内容を要約する。 1)グリシンベタイン(GB)の光合成における役割 GB合成能を持たない塩感受性植物であるインゲンに塩ストレス負荷の有無の条件下でGBを投与し,葉中の可溶性タンパク質を2次元電気泳動で検索したところ,数個のタンパク質のスポットの変動を観測した。そのうちGB投与のときのみに現れるスポットを解析した結果,光合成タンパク質のプラストシアニンであった。GB投与が光合成系を活性化することが考えられたので,引き続きクロロプラストのチラコイド膜タンパク質の変動を観測中である。 2)オオムギおよびコムギの耐塩性の品種間差に関する研究 岡山大生物資源科学研究所のオオムギ保存施設から種子を供与いただき,栽培試験を行いGBの誘導量と前年度求めた判別関数Zとの関係を検討した。その結果,Zの大小とGBの誘導量の大小が対応していること,さらにそれが耐塩性の強弱に対応していることを確認した。さらにコムギについても検討し,GB誘導量と誘導パターンはオオムギに類似していることを明らかにした。この結果から,キャピラリー電気泳動法を用いたGB定量によるオオムギ,コムギの耐塩性に関する品種間差を判別できることを明らかにした。 3)牧草アルファルファの耐塩性に関する研究 塩類土壌地帯では放牧のための牧草が要求されている。牧草として多用されているアルファルファの種子15種を集め,種子および幼植物中の耐塩性因子をキャピラリー電気泳動法で分析した。その結果,アルファルファでは,種子にはプロリンベタイン,トリゴネリン,プロリンなどが主要な耐塩性因子として含まれていたが,幼植物ではプロリンベタインのみが含まれていた。このことから生育とともに浸透圧調節因子が変わること,およびプロリンベタインが主要な調節因子であることが分かった。 4)ソバのアルミニウム耐性機構 世界に広がる酸性土壌ではアルミニウムイオンが顕著な植物の生育阻害を引き起こすことが大問題となっている。ところがソバは酸性土壌によく生育しアルミニウム耐性を示す。本研究ではその原因を分成化学的に追究した。その結果,ソバは葉中にシュウ酸を蓄積すること,そのシュウ酸がアルミニウムイオンに結合し,Al(oxalate)_3の錯体を形成し,これによりアルミニウムの毒性を消去していることが示された。したがって酸性土壌における作物生産にはアルミニウム結合能を有する有機酸を合成できる品種の選抜が必要であることを示した。
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