研究課題/領域番号 |
15380229
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
広瀬 正明 京都大学, 農学研究科, 教授 (60026523)
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研究分担者 |
水谷 公彦 京都大学, 農学研究科, 助手 (40314281)
高橋 延行 京都大学, 農学研究科, 助手 (20252520)
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キーワード | セルピン / オボアルブミン / タンパク質工学 / 卵白タンパク質 / ループ挿入 / セリンプロティナーゼ |
研究概要 |
セルピンによる阻害活性の発現には、分子表面に存在するReactive Center Loop (RCL)のproteinase切断後に起こる熱安定化型への構造変換(分子内ループ挿入)が中心的な役割を果たす。セルピンスーパーファミリーに属する卵白オボアルブミンでは、RCLの切断後のループ挿入能を本来持たないが、構造変換のヒンジ部分を置換した変異体OVA (R339T)では、典型的なセルピン・ループ挿入機構を有する。そこで、proteinase阻害活性に必要なループ挿入速度の高速化に向けた、さらなる変異を導入した。まずRCLをtrypsin感受性にしたOVA (A352R/R339T)を調製し、ループ挿入速度を高精度に測定するためのHPLCによる新規の方法を確立した。本法を使ってRCL切断後のループ挿入速度を解析したところ、pH8、25℃において、t_<1/2>約80分の一次反応曲線を描いた。反応条件を変えて解析すると、ループ挿入はpHが低いと速いことがわかり、速度定数kは酸性側に変曲点を持つシグモイド曲線を示し、オボアルブミンのループ挿入は酸性側鎖の解離状態により制御されることが分った。さらに、反応温度を変えて速度定数の測定を行ったところ、速度定数の対数プロットは、1/Tに対して傾きが負の直線となり、ループ挿入過程はアレニウス式に従う温度依存性の反応で、その活性化エネルギーは約30kcal/molと算出できた。この値は、10個程度の水素結合による熱安定化に相当するが、結晶構造においてs3Aとs5A間に10個の水素結合が水素結合が存在することと符号しており、ループ挿入反応の遷移状中間体は、両ストランド間の相互作用が失われた構造をとることが明らかにされた。
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