これまで酵素やタンパク質の機能解析や変換には、アミノ酸残基を1個1個換えていくランダム変異法や部位特異的変異法が使われてきたが、さらに高度な機能解析には、狙った1個のアミノ酸や数個のアミノ酸残基を同時に20種すべてに網羅的に組み合わせて変異させるコンビナトリアル(網羅的)変異法の適用が必須となってきた。しかし、この変異法を用いる場合、従来のタンパク質発現法では、変異タンパク質を純粋にとりだすためには細胞を破砕したり濃縮したり、さらに、種々のカラムクロマトグラフィー操作が必要となる。一方、DNA情報から発現したタンパク質を細胞などの表層にデイスプレイ(提示)させた場合、タンパク質を精製せずに解析でき、さらに、ナノテクノロジーにより開発が行われている半導体微細加工技術を用いたマイクロチャンバーアレイによる超高速マイクロスクリーニング系の導入により、ディスプレイされた細胞を一つの支持体として、提示されたタンパク質のスクリーニングと機能解析ができ、タンパク質のアミノ酸配列分析を待たずに、一細胞PCR法などの併用により、導入されたDNAの配列から示されたタンパク質のアミノ酸配列が決定できる。このような、DNA情報と機能タンパク質との解析のいわゆる距離を一気に短縮させるものと考えられる【細胞表層工学(Cell Surface Engineering)】による細胞表層デイスプレイの手法とマイクロチャンバーアレイによる超高速マイクロスクリーニング系の融合した系の開発を行ってきた。具体的には、今年度は、狙ったモデルタンパク質の【細胞表層工学(Cell Surface Engineering)】技術によるいわゆるタンパク質ライブラリーの調製に成功した。次に、ナノテクノロジーを用いたマイクロチャンバーアレイによる超高速マイクロスクリーニング系への導入システムを構築する方法を模索した。
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