研究概要 |
低温馴化処理(4℃)を施したコムギクラウン組織より全RNA,及び可溶性総タンパク質を抽出し,ノーザン及びウエスタン解析により,低温馴化過程におけるWCSP1mRNAとタンパク質量の変動の定量化を行った.mRNAの蓄積はほぼ直線的に見られ,2週間で約4倍の誘導が観察された.しかしながらWCSP1タンパク質の蓄積は7日目以降に指数関数的な上昇が見られ,最終的には1000倍以上の誘導が観察された.この結果から,WCSP1の発現には,翻訳レベルでの調節機構が働いており,そこにWCSP1が関与する可能性が示唆された.In situ hybridization法により,WCSP1発現の組織特異性を調べたところ,WCSP1転写産物の蓄積は,低温馴化中のクラウン組織において観察され,特に茎頂付近の細胞及び若い葉組織で発現が強いことが明らかになった.また,WCSP1-GFP融合タンパグ質をコムギ茎葉組織に一過的発現させ,その細胞内局在性について検討した.WCSP1は,核及びERに局在している可能性が示された.精製タンパク質の解析の過程でWCSP1タンパク質は煮沸処理によっても変性(沈殿)しない性質を持つことが明らかとなった.また,その処理でDNAへの結合活性には変化がなく,活性を維持していることが明らかとなった.この化学的な安定性は本タンパク質の可塑的な構造の可能性を示唆しており,その特徴と機能発現との関わりを明らかにしていく必要がある.
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