研究概要 |
ヒトゲノム解析がほぼ完了した現在,それらがコードする様々な生体分子の機能解析が次の研究ターゲットとなっている。特に蛋白質のリン酸化は,細胞内の様々な制御機構に関わる共通のメカニズムであり,リン酸花されたアミノ酸残基を同定することは,代謝経路や細胞内機能におけるリン酸化蛋白質の役割を知る上で不可欠である。個々のリン酸化生体分子を特異的に捕捉する抗体を用いる方法とは異なり,本研究ではリン酸アニオン部分を認識する機能性分子(フォスフォプロテオーム解析試薬:フォスタグ)を用いた新しいリン酸化分子の分離分析法を開発する。「フォスタグ」の「フォス」はリン酸アニオン(フォスフェート)の頭文字を,「タグ」は標識を表している。本研究は,21世紀の蛋白質機能解析(プロテオーム)や細胞機能解析(セローム)研究の発展に大きく貢献するものと確信している。15年度は,リン酸化生体分子の分離・検出に適した様々な機能を付加した新規のフォスタグ(蛍光発色団を結台させたもの,アガロースビーズに結合させたポリマーなど)を合成した。合成した化合物の溶液内平衡反応や溶解性などついて,分光分析,pH滴定法,電気泳動法などにより検討した。リン酸化蛋白質の二次元電気泳動法でのフォスタグの有用性(選択的な蛍光染色能)について調べた。その結果,Native-PAGE法を用いた場合リン酸化タンパク質を選択的に染色できることが明らかとなった。また,アガロースに結合させたフォスタグは,リン酸化ペプチドやタンパク質のアフィニティークロマト用ゲルとして利用可能であることも分かった。16年度は,電気泳動ゲルに利用可能なアクリルアミド-フォスタグとビオチン化-フォスタグを合成し,それらの利用法について検討した。ビオチン化フォスタグはSPR分析にやカラムクロマトグラフイーで使用可能なことが明らかとなった。
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