研究概要 |
ヒトゲノム解析がほぼ完了した現在,それらがコードする様々な蛋白質の機能解析が次の研究ターゲットとなっている。特に蛋白質のリン酸化は,細胞内の様々な制御機構に関わる共通のメカニズムであり,リン酸化されたアミノ酸残基を同定することは,代謝経路や細胞内機能におけるリン酸化蛋白質の役割を知る上で不可欠である。本研究では,独自に合成したリン酸アニオン認識分子「フォスタグ」を用いたリン酸化分子の新しい分離分析法を開発している。17年度は,ビオチン基やアクリルアミド基を結合したフォスタグを利用した実用的な二っの研究技術の開発に成功した。(1)ビオチン化フォスタグと化学発光酵素系,HRP-ストレプトアビジンを組み合わせて,ウエスタン解析による高感度なリン酸化蛋白質の発光検出法を検討した。その結果,放射性同位体リンを使用しないで,ナノモルレベルのリン酸化蛋白質を選択的に検出することができた。この方法は,高価で不安定な抗リン酸化抗体を持たなくてもよく,通常の実験室で行うことがき,セリン/スレオニンやチロシンのリン酸基をすべて検出できる画期的な検出法である。(2)アクリルアミド化フォスタグと通常のアクリルアミドを共重合させた電気泳動ゲルを用いたリン酸アフィニティーSDS電気泳動法を検討した。その結果,ほぼ同じ分子量のリン酸化蛋白質と非リン酸化蛋白質を効率良く分離して同時に定量検出することができた。この方法は,キナーゼやフォスファターゼの特異性を簡単かつ効率よく調べることを可能にする技術である。
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