研究概要 |
ヒトゲノム解析がほぼ完了した現在,それらがコードする様々なタンパク質の機能解析が次の研究ターゲットとなっている。特にタンパク質のリン酸化は,細胞内の様々な制御機構に関わる共通のメカニズムであり,リン酸化されたアミノ酸残基を同定することは,代謝経路や細胞内機能におけるリン酸化蛋白質の役割を知る上で不可欠である。本研究では,独自に合成したリン酸アニオン認識分子「フォスタグ」を用いたリン酸化分子の新しい分離分析法を開発した。代表的な方法は,1)リン酸アフィニティクロマトグラフィー法,2)リン酸化分子の選択的質量分析,3)フォスタグを結合した電気泳動ゲルを利用したリン酸化タンパク質のプロファイリング法,4)SNPタイピングによる遺伝子検査法,5)リン酸化タンパク質の網羅的ウエスタン解析法である。中でもリン酸化タンパク質のプロファイリング法は,リン酸化数やリン酸化部位の違いによりほぼ同じ分子量のリン酸化タンパク質をポリアクリルアミド電気泳動ゲル上で分離する画期的な分離分析法である。この方法は,これまでのリン酸化プロテオミクス研究を劇的に進展させるものと確信している。フォスタグを用いた遺伝子検査法は,末端にリン酸基をもつPCRプライマー(SNPタイプ1)とリン酸基を持たないもの(SNPタイプ2)を用意し,リン酸基のついているPCR産物をついていないもの(いずれも同じ塩基対数)から分離して検出する方法である。この方法により,ミニゲルクラスの電気泳動装置があれば,ほほ100%の検出感度でSNPタイピングが通常の実験室で数十のサンプルを一度に検査できる。本課題研究により,新しいリン酸化プロテオミクス研究技術を数多く開発することができた。今後,それらの技術が世界標準のリン酸化プロテオミクス技術となるようさらに研究開発を進めていく予定である。
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