研究概要 |
遺伝情報の担い手DNAとその構成成分であるヌクレオチドは極めて強い安定性を要求される物質にも拘わらず、化学的には不安定で通常の環境下で数々の損傷を受ける。そのため、すべての生物はDNAやヌクレオチドの損傷を修復する多様な機構を備え、正確なDNAの複製と合わせて遺伝情報や生命を維持している。本研究では、DNA複製の異常基質分解、DNA複製の開始、DNA複製進行時の各場面で遺伝情報維持に働く合計5種類の蛋白質(MutT, hMTH1, NUDT5, GANP-PD, AlkB)とその相互作用分子との複合体のX線結晶構造解析を行い、相互作用や生体反応、高度な制御の仕組みを原子の位置のレベルで明らかにし、機能と立体構造の多様性の中から機能発現の基本となる立体構造上の原理を発見することを目的とする。 5種すべての蛋白質を大腸菌の発現系を用いて高純度、大量に精製し、蛋白質のみ、もしくはリガンド、Co-factor存在下結晶化を行った。本年度の研究成果は以下の通りである。 MutTについては、MutT-8-oxo-d GMP複合体結晶の1.96Åの高分解能X線結晶構造解析を行うと共にMn^<2+>のSoakingを行い3元複合体の構造を解析し、特異的基質認識機構の解明と加水分解機構の推定に成功した。 hMTH1とNUDT5についてはそれぞれ、8-oxo-d GMP並びに8-oxo-d GMP-Mn^<2+>複合体の結晶化に成功した。現在、構造解析を目指し、SeMet化hMTH1-8-oxo-d GMP複合体の結晶化、NUDT5-8-oxo-d GMP-Mn^<2+>3元複合体のより高分解能結晶の調製を試みている。 GANP-PDとAlkBについては、それぞれATPや1メチルアデノシンやCo-factorの金属イオン存在下結晶化を行っているが、現在のところ構造解析可能な結晶は得られていない。
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