研究課題
基盤研究(B)
生体の免疫系と神経系はこれまで独立したシステムと考えられてきた。しかも、このようなシステムを追究する適切な手段がなく、これまではほとんどその研究がなされてこなかった。研究代表者らはこのような免疫系と神経系のクロストーク研究の突破口として、新生児マウスから神経節を単離し、神経成長因子の存在下で、神経初代培養細胞を継続培養する技術を確立した。そして、初代培養神経細胞として交感神経と感覚神経の両者を用いることを可能にした。これら初代培養神経細胞と免疫細胞(マスト細胞とリンパ球)をin vitroで共存培養し、両者の細胞間相互作用を顕微光学法で追究した。神経系から免疫系へは(マスト細胞)へは液性因子(サブスタンスP)を介してグロストークが起こっていることが明らかになった。本開発技術は免疫・神経連関を物理系薬学の立場から追究するのに有力な手段となった。開発したin vitro共存培養システムと顕微光学法により、末梢及び中枢での免疫・神経クロストークを多角的に機能解析した。また、その研究成果を薬学研究の発展・展開に結びつけた。具体的研究成果は、(1)神経節初代培養細胞と免疫細胞の共存培養法の確立、(2)多次元顕微光学システムを用いた、免疫系と神経系クロストークの機能解析、(3)神経細胞からマスト細胞への情報伝達にはサブスタンスPが関与、(4)神経細胞からTリンパ球への情報伝達にはノルアドレナリンが関与、(5)免疫系(マスト細胞)から神経系への逆方向の情報伝達にはATPが関与、(6)マスト細胞と神経突起は神経シナップス様の構造体を形成する、(7)これらシナップス様構造の形成には接着分子(蛋白質)のN-カドヘリンとSynCAMが重要な寄与をなしている等の多くの先端的な成果を世界に先駆け明らかにした。
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