1.DNAダンベルは、プラスミドDNAを直線化し、末端をループを形成するオリゴヌクレオチドでキャッピングすることにより作製する。今年度は、直線状DNAの末端を保護するループの配列の影響を検討した。 (1)様々な配列のループ形成オリゴヌクレオチドを化学合成し、HPLCにより高純度に精製した。合成したオリゴヌクレオチドのループ部分の配列は、(i)GAA(熱力学的に安定な配列)、(ii)TTTTT(単純なTの繰り返し配列)、及び(iii)TTXTT(Xはdioxaoctylaminoリンカーを有する修飾ウラシル、非天然塩基の導入例)の3種である。 (2)これらの配列のループ形成オリゴヌクレオチドを用いてGFP遺伝子を有するDNAダンベルを作製し、COS-7細胞に導入した。その結果、GAA配列のDNAダンベルとTTTTT配列のDNAダンベルを導入した際の発現効率に差は観察されなかった。また、TTTTT配列のDNAダンベルと修飾ウラシルを導入したTTXTT配列のDNAダンベルを導入した際の発現効率は、TTTTT配列>TTXTT配列であった。以上のことから、ループ部分の配列自体は、GFP遺伝子の発現に影響を与えないものの、非天然塩基が存在する場合には発現効率が減少することが明らかとなった。この理由の詳細につては明らかではないが、転写因子との相互作用が弱くなった可能性や、DNA修復酵素により非天然型塩基が「異物」として認識され、DNAが分解している可能性が考えられる。 2.研究代表者は、外来遺伝子が核に送達されてからの動態が、発現の重要な因子の一つであることを提唱している。今年度は、この「核内動態制御」(Controlled intranuclear disposition)の概念を世界に向け発信した。
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