今年度は、外来DNAの核内における挙動(核内動態)を詳細に検討した。 まず、DNA量の解析が容易なnaked DNAの投与を行った。マウスの尾静脈より、2mLの生理食塩水に溶解させたnaked DNA(500ng)を急速に投与した(hydrodynamics-based injection)。経時的に、肝臓におけるルシフェラーゼ活性・DNA量・メチル化頻度を測定したところ、 (1)DNA1コピー当たりのルシフェラーゼ活性は急速に減少する(silencing) (2)核内で断片化が生ずる (3)メチル化は主として断片化DNAに生ずる (4)intactなプラスミドのメチル化頻度は低いまま保たれている (5)silencingはメチル化と無関係に生ずる ことが明らかとなった。 また、カチオニック脂質を用いて培養細胞にDNAを導入し、AUCを用いてDNA1コピー当たりのルシフェラーゼ発現量を計算した。その結果、DNA1コピー当たり、4×10^5以上(NIH3T3細胞)、2×10^4以上(HeLa細胞)分子のルシフェラーゼ蛋白質が産生されていると推定された。 核内動態制御の1つとして遺伝子修復法の研究を進めた。その結果、一本鎖ファージミドDNA由来の一本鎖直鎖状DNAを用いる方法が、従来のPCR産物を用いる方法に比較して、10倍以上の効率で遺伝子修復を行えることが明らかとなった。
|