研究概要 |
本研究は,病態下における防御的酸化ストレス応答タンパク質としてのヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)誘導と生体防御応答機構,さらに薬物代謝酵素シトクロムP450(CYP)の変動要因を解明する目的で,各種サイトカイン遺伝子ノックアウト(KO)マウス,関節リウマチモデル(HTLV-I Tg)マウスおよびコカイン誘発肝障害マウスを用い検討したものである.本研究課題は順調に進行し,研究実績として以下のようなことを中心に解明が進んだ.HTLV-I Tgマウスでは,恒常的に発現しているCYP分子種のうちCYP3A11 mRNA発現が有意に減少しており,その酵素活性を反映するtestosterone 6β-hydroxylation活性も有意に低下していた.HTLV-I Tgマウスでは,炎症性サイトカインであるIL-6濃度が血清中で有意に上昇していた.ヒトの関節リウマチ患者においても血中IL-6濃度の上昇が報告されており,薬物代謝酵素活性の低下が起こっている可能性が示唆される.さらにコカイン誘発肝障害はラジカル種や炎症性サイトカインの関与が示唆されている.IL-1β,IL-6,TNFαの各KOマウスにコカインを投与したところIL-6KOマウスにおいて劇的にコカイン誘発肝障害が抑制されたことから,コカインの肝障害にはIL-6が大きく関与していることが示唆された.一方,関節リウマチ治療薬と広く使用されているオーラノフィンはマウス肝臓においてHO-1を有意に誘導することを明らかとした.そこでオーラノフィンを前処置しコカインを投与したところ劇的に肝障害が抑制されたことから,オーラノフィンにより誘導されたHO-1が抗炎症作用の一端を担っている可能性が示唆された.さらに、肝臓発癌モデルラットでは,細胞質内のCARが過剰発現していることを明らかにした.以上の研究成果は,現在投稿準備中である.
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