妊娠マウスにディーゼル排ガスを吸入暴露し、胎仔及び出生仔への影響を検討した。妊娠マウスを暴露群3群(DE中の微粒子(DEP)濃度として、0.3、1.0、3.0mg/m^3)と対照群にわけ、暴露群には妊娠2日目から16日目までDEを暴露した。その後実験に用いるまでの間は清浄空気中で飼育した。出生仔が3週齢に達した時点で離乳し、生殖系及び脳神経系に及ぼす影響を解析した。今年度は特に脳神経系に対する影響を組織学的に解析した結果を報告する。胎仔期DE暴露を施された11週齢の出生仔マウスの脳組織光学顕微鏡による解析ではCaspase 3に対する免疫染色陽性細胞が、コントロール群と比較して、DE暴露群大脳皮質において散在して認められた。電顕的にも、アポトーシス小体形成過程において特徴的所見が確認された。また、脳・血液関門の直接の働きをしていると考えられる、血管周囲細胞(florescent granular perithelial (FGP)細胞の形態に着目し、検討した結果、FGP細胞質内の顆粒に変性像が認められ、またFGP細胞の存在する血管周囲に浮腫が認められた。以上の所見から、胎仔期にDE暴露した仔マウスの大脳皮質において、脳・血液関門に対する影響が考えられた。FGP細胞の機能を考慮した場合、これらの結果は、大脳組織の細胞にアポトーシスの発現に関与している可能性が高く、DE暴露の脳機能に及ぼす影響が懸念される。
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