研究課題
基盤研究(B)
核内受容体FXRを欠損するマウスに肝障害モデル薬物としてリトコール酸(LCA)等の胆汁酸を処置し、肝障害の防御機構と核内受容体相互作用の関係を解析した。FXR欠損マウスはLCA誘発肝障害に対して抵抗性を示し、その原因として肝臓からのLCAの排泄能力の亢進が考えられた。胆汁酸代謝酵素の発現レベルの解析により欠損マウスにおけるhydroxysteroid sulfotransferase(St2a)とCyp3aの肝含量の亢進が認められた。St2aは胆汁酸の硫酸抱合を触媒するが、欠損マウスでは胆汁中や糞中への硫酸抱合型胆汁酸の排泄量が増加し、St2aの肝内での発現の亢進が、肝内LCAレベルの上昇を抑え肝障害を軽減させていることが示唆された。Cyp3aはLCAの6位水酸化を触媒し、体外排泄を促進させる。Cyp3aとSt2aはLCAによる肝障害の防御因子と考えられ、発現における核内受容体の関与について解析した。St2aの肝含量はFXRリガンドのchenodeoxycholic acid(CDCA)処置において野性型マウスで減少し、欠損型マウスで増加した。Cyp3aのLCAやpregnenolone 16α-carbonitrileによる発現誘導(pregnane X receptor(PXR)シグナル)においてもCDCAは野性型マウスでのみ抑制的に作用し、St2aとCyp3aの発現はFXRシグナルにより抑制的に調節されていることが示唆された。LCAによる肝障害はPXR等のシグナルにより抑制されていると考えられているが、FXRシグナルはそれら核内受容体シグナルを抑制することでLCAによる肝障害をむしろ増強させている可能性が示唆された。一方コール酸(CA)処置により欠損マウスは重篤な肝障害を誘発する。この原因として欠損マウスは胆汁酸の胆汁中への排泄能に問題があると考えられた。欠損マウスでは肝内胆汁酸濃度の上昇においても胆汁酸排泄トランスポーター(Bsep)の発現が亢進せず、肝内胆汁酸濃度の増加を抑制出来ないことからこの機能が肝障害の原因と考えられた。BsepはFXRにより促進的に調節されていることよりFXRシグナルが一次胆汁酸のCAによる肝障害を抑制していると考えられた。以上のように胆汁酸の中でもCAとLCAでは肝障害に対する防御系が異なり、核内受容体の作用も異なることが示唆された。
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