研究概要 |
DNAマイクロアレイを用いて、胆汁うっ滞時の肝における遺伝子発現変化を網羅的に解析し、胆汁うっ滞に伴う生化学的変化と併せて考察することで、長期間の胆汁うっ滞時に特徴的に発現変化する遺伝子群を同定することを試みた。 ラットに胆管結紮処置あるいはコントロール手術を施し、1/2,1,3,7,14及び28日後の6時点で全血、及び肝臓を採取した。胆管結紮処置ラット肝における遺伝子発現変化は1,800のラット遺伝子を搭載したcDNAマイクロアレイを用いて解析し、6時点のうち少なくとも1時点で、コントロールに対し2倍以上あるいは1/2以下の有意な発現変化を示した遺伝子について階層的クラスター解析を行った。 胆汁うっ滞時肝において134種の遺伝子の有意な発現変化が認められ、クラスター解析の結果、7つの異なる変動推移を示すクラスターが形成された。胆汁うっ滞後、比較的早期に発現上昇した遺伝子群にはfatty acid synthaseやstearoyl coenzyme A desaturase等の脂質代謝関連遺伝子が含まれ、胆汁うっ滞時に認められる高脂血症等の脂質代謝異常を反映しているものと考えられた。また、緩やかな発現上昇パターンを示した遺伝子群にはcollagen type 1やconnective tissue growth factor等の、組織繊維化に伴って発現上昇する事が知られる遺伝子が含まれており、うっ滞の進行に伴う肝の繊維化をよく反映しているものと考えられた。一方、胆汁うっ滞初期において一過性の発現上昇を示す遺伝子も確認され、結紮後12時間以内に発現変化する遺伝子が存在する可能性が示唆された。
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