液性免疫のみならず細胞性免疫をも誘導できるDNAワクチンのアプローチは、近年、細菌やウイルス感染症、がん、免疫疾患等さまざまな疾病に対する新たな治療法として期待されている。しかしながら期待どおりの成果が挙げられているとは言いがたく、投与の最適化が望まれている。DNAワクチンの効果発現メカニズムに関しては未だ不明な点が多く、さらなる基礎的な検討が必要ではあるが、本現象において最も重要な役割を果たしている樹状細胞へのプラスミドDNAのデリバリーの最適化が最重要課題であることは共通の認識となっている。そこで本研究では、最も強力な抗原提示細胞であり、DNAワクチンの効果を大きく左右する樹状細胞を標的に選定し、DNAワクチンの効果を最大限に引き出せる新しいデリバリー戦略の確立を目指した。平成15年度は、カチオン性高分子の利用により抗原特異的な免疫応答が上昇することが明らかとした。得られた結果に基づき、平成16年度には効率的な細胞障害性T細胞(CTL)の誘導を目的に樹状細胞内で発現させた抗原の細胞内動態を制御するためのプラスミドDNAの設計を試みた。種々のベクターを設計し、樹状細胞を用いたin vitro実験において抗原提示能を比較した結果、小胞体滞留型ベクターが最も優れていることを見出した。エレクトロポーレション法を利用して皮内投与により本ベクターを用いてマウスを免疫したところ強力なCTL誘導能を有することが明らかとなり、DNAワクチンにおける有用なベクターとなる可能性が示された。
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