研究課題/領域番号 |
15390049
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋本 均 大阪大学, 薬学研究科, 助教授 (30240849)
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研究分担者 |
馬場 明道 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (70107100)
新谷 紀人 大阪大学, 薬学研究科, 助手 (10335367)
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キーワード | PACAP / 遺伝子欠損マウス / 精神行動 / プレパルス抑制 / アンフェタミン / セロトニン / セロトニン1A受容体 |
研究概要 |
PACAPは神経伝達物質・神経調節因子など多面的な働きを有する神経ペプチドである。前年度までの研究により、その欠損マウスの表現型として、生後早期の高死亡率、新規環境における多動、新奇探索傾向、異常ジャンプ行動、および摂食量の低下等を認め、さらに、音刺激驚愕反応のプレパルス抑制(PPI)を指標とした感覚情報処理機能が、発達依存的に障害されていることを見い出した。そこで本年度は引き続き、統合失調疾、注意欠陥多動性障害(ADHD)などのヒト疾患の分子機序へのアプローチを目的とし、本ペプチドシグナルの高次精神機能の制御様式の解明および創薬標的分子の同定を目指した研究を実施した。 1.PACAP欠損マウスが示す新規環境下における多動および異常ジャンプ行動は、アンフェタミンにより逆説的に鎮静化される。その機構について検討を進めた結果、5-HT_<1A>受容体依存的であることを明らかにした。 2.一方、5-HT_<1A>受容体作動薬とともにアンフェタミンを投与した野生型マウスにおいてヽ逆説的鎮静化作用を認めた。 3.PACAP欠損マウスは、うつ状態の指標となる強制水泳試験時における無動時間が延長していた。またこの変化は、非定型抗精神病薬risperidoneにより改善された。逆に抗うつ薬desipramineは、野生型マウスの無動時間を短縮させたが、PACAP欠損マウスでの効果は、高用量でのみ認められた。 4.RisperidoneはPACAP欠損マウスの多動およびPPI障害も著明に改善する。上記3の結果と併せてこれらの知見は、非定型抗精神病薬が有効な精神疾患における機作との関連性において興味深い。 以上の結果より、多動・感覚情報処理機能障害・うつ傾向などのヒト精神疾患およびその中間表現型(endophenotype)や、精神刺激薬による逆説的改善作用、あるいは非定型抗精神病薬感受性の脳機能変化の分子基盤を解析するうえで、PACAP欠損マウスが、病態動物モデルとしての表現型および構成概念上の妥当性を有していることが示されたと考えられる。
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