キチナーゼファミリー蛋白のうち、Ym蛋白とhuman cartilage glycoprotein(HC-gp 39、マウスではbrp-39という)発現細胞の同定を正常マウスで行った。Ym1は、骨髄・脾臓などの造血組織では未分化好中球、肺では肺胞マクロファージに特異的に発現し、いずれの細胞でも粗面小胞体腔に存在することが明らかになった。好中球での発現は細胞の分化(成熟)につれ消失することが特徴的であり、細胞分化におけるYm1の役割が示唆された。Ym1と95%以上のホモロジーをもつYm2は、前胃と腺胃の境界部の重層扁平上皮に発現していた。brp-39は、硬組織では軟骨内骨化巣における軟骨細胞に、乳腺では離乳期の乳腺細胞に強く発現していた。乳腺での発現は、授乳期にはまったく認められず、離乳2日目から開始し、次第に増強した。また、乳汁に分泌される所見が得られた。乳腺のbrp-39はアポトーシスの誘導というより、乳腺退縮に伴う組織再構築に関与していると考えられた。キチナーゼ活性を有し、消化酵素として働くacidic mammalian chitinase(消化管キチナーゼ)は、耳下腺の腺細胞と、胃粘膜主細胞の顆粒に含まれ、唾液および胃液中に分泌されることを、蛋白レベルで証明した。一方、ウシの消化管キチナーゼは肝臓で産生され、血中に分泌される。抗体を用いた定量法を開発し、ウシの血中キチナーゼの変動を調べたところ、原虫感染に伴い血中濃度が上昇することから、微生物・寄生虫感染に対する防御作用があることが示唆された。
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