キチナーゼファミリー蛋白はN-アセチルグルコサミンに特異性をもつレクチンである。キチン分解活性をもつものとして、キトトリオシダーゼとacidic mammalian chinitase(AMCase)が哺乳類で同定された。分解活性をもたないものは数種存在するが、本研究ではYm蛋白を選び、発現細胞の同定を行った。キトトリオシダーゼはヒトではマクロファージと好中球に発現するが、マウスでは、口腔から前胃にかけての重層扁平上皮に発現し、予想されていた生体防御とは異なる機能が想定された。AMCaseは唾液腺と胃粘膜より分泌され、キチンを含む食物(例えば、昆虫・甲殻類)の消化に関わっていると予想される。本研究において、AMCaseの強い発現を魚類(ウナギ)と原索動物(ホヤ)でも胃粘膜腺細胞に認めたことから、進化の上で構造・機能とも保存されている消化酵素であると結論できた。Ym1は、骨髄・脾臓(胎児の肝臓)といった造血組織において、未分化好中球に発現していた。そのほか骨髄では、stromal cellであるマクロファージ内にYmを含む結晶が頻繁に観察された。肺では肺胞マクロファージで産生され、肺胞腔に分泌されると思われる。肝臓に寄生するM.Cortiの感染実験では、肝臓の虫体の周辺部にYm含有の炎症性細胞の浸潤が見られるほか、肺胞マクロファージの肥大・巨細胞化が顕著であった。β-ガラクトシド結合に特異的なレクチンとしてガラクトースがある。10種類以上のサブタイプがあるが、これらの発現を網羅的に調べたところ、消化管に集中して発現することを見出した。しかも、サブタイプによって発現部位に棲み分けがみられること、消化管のすべての部位がいずれかのサブタイプを必ず発現していることがわかった。
|