我々は発生期大脳皮質の脳室帯に発現する新規分子FILIPを同定し、FILIPがフィラミンAと結合し、フィラミンAの分解を促進することにより、脳室帯からの細胞移動の開始を負に制御していることを明らかとしてきた。本研究では、FILIPの活性が抑制され、フィラミンAが細胞内に十分量蓄積された時、どのような機構で脳表方向に方向性をもって細胞が移動を開始するかを解明することがそもそもの目的である。本年度は最終的に以下の成果を得た。 (1)フィラミンの細胞内局在を詳細に検討する。 FILIPについての細胞内局在も併せて検討した。FILIP、フィラミンとも細胞質と細胞膜近傍で大きくその存在様式が変化していた。すなわち、細胞質では両者は共存するものの、フィラミンは(少なくとも一部は)分解されており、細胞膜近傍では両者は繊維状構造を保ったまま存在していた。この事は、細胞質と細胞膜近傍とでフィラミンの分解程度が大きく変わること、すなわち細胞内局在変化によるフィラミンの活性調節ができることを物語っており、ついでその局在変化による活性調節機構を検討し、その分子機構の概要を明らかとできた。 (2)フォスファチジルイノシトールリン酸の細胞内局在について 局在の可視化・検討は、これらフォスファチジルイノシトールリン酸に対する結合部位を持つ分子をGFPを結合させた分子を細胞内に発現させ可視化を進めた。移動細胞での局在を観察することができたが、時間によりどのように変化するかを明らかとする段階までは達しなかった。今後の課題である。 (3)関連するノックアウトマウスの作成と解析を行った。脳室帯の細胞移動に関連する分子のノックアウトマウスの作成・解析を行った。
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