本年度は心筋カリウム電流I_<Ks>のタンパク間相互作用による調節機構の研究を中心に行なった。 (1)I_<Ks>チャネルのサブユニットとのタンパク間相互作用による機能調節:I_<Ks>チャネルは極めて遅い活性化と交感神経β受容体刺激による活性化を特徴としており、これらは心拍数変化時に心筋電気活動がアダプテーションする主因子となっている。I_<Ks>チャネルはαサブユニットKCNQ1とβサブユニットKCNEのヘテロ複合体から構成されている。KCNEファミリーのうちKCNE1とKCNE2を共発現させると、KCNQ1チャネルに遅い活性化とβ受容体刺激による活性化がもたらされ、KCNE3ではこれらの作用は見られなかった。KCNE1-3の構造比較・変異体を用いた検討などから、KCNQ1とKCNEファミリーのカルボキシ末端との相互作用がI_<Ks>チャネルの遅い活性化をもたらしており、KCNEファミリーカルボキシ末端の陰性荷電アミノ酸およびKCNQ1アミノ末端のリン酸化による陰性荷電獲得が、KCNQ1-KCNEチャネルのタンパク間相互作用を規定する因子となっていることが判明した。これはKCNE1遺伝子変異によるQT延長症候群の病態発現にも関与することが示唆された。 (2)カベオラにおけるタンパク間相互作用によるI_<Ks>チャネル調節:私達は一酸化窒素がI_<Ks>はの新たな調節因子として重要であり、細胞内カルシウム濃度上昇と性ホルモンによるI_<Ks>チャネル調節に関与する。カルシウムと性ホルモンによるI_<Ks>調節には異なったタンパク間相互作用が関与しており、前者はカルシウム結合タンパクのカルモデュリン、後者にはc-Src・Pl3-kinase・Aktを含むタンパク-タンパク相互作用が重要となり、後者は不整脈の性差のメカニズムとなることが示唆された。
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