研究概要 |
本研究では、胃プロトンポンプ(H^+,K^+-ATPase)とCLC-5塩素イオンチャネルとの分子機能連関に着目し、以下のような新規知見を得た。 まず、胃プロトンポンプ安定発現細胞(HEK293細胞)にCLC-5を一過性に発現させて、胃プロトンポンプ阻害薬(SCH28080)感受性のK^+依存性ATPase活性を測定した。その結果CLC-5発現細胞におけるATPase活性がコントロールに比べ有意に上昇した。CLC-5の発現により胃プロトンポンプの発現量に有意な変化は観察されなかった。 つぎに、CLC-5の発現を調節することが可能な胃プロトンポンプ安定共発現細胞の構築を試みた。T-RExシステムによる細胞構築には抗生物質4種類によるセレクションが必要なため困難を極めたが、最終的に1個のクローンを得ることに成功した。免疫細胞染色を行ったところ、CLC-5の分布パターンと胃プロトンポンプの分布パターンは同様で、原形質膜上において共発現していることを明らかにした。また、N-グリコシダーゼF処理による実験で、安定発現細胞におけるCLC-5は糖鎖修飾を受けていることを確認した。したがってCLC-5と胃プロトンポンプの分子機能連関を検討する上で優れたモデルであると考えた。この実験系を用いて、K^+の代替イオンの^<86>Rb^+を用いた取り込み実験を行ったところ、CLC-5発現細胞におけるSCH28080感受性^<86>Rb^+輸送活性はコントロールに比べて有意に高かった。 以上のことから、CLC-5はプロトンポンプの活性を上昇させることで、胃酸分泌機構に直接的に関与する可能性が示唆された。
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