内向き整流Kチャネルの活性化は細胞外Kイオンに依存すると考えられている。また、膜二回貫通型Kチャネル結晶のX線解析により、selectivity filterの入口付近にKイオンが結合していることがわかっている。細胞外にK結合部位があり、Kが結合することによりチャネルが活性化するという仮説を立て、この部位を同定するため、内向き整流Kチャネル(Kir2.1)の細胞外ループの酸性アミノ酸残基を中性化した.変異体遺伝子(D112N、D114N、E125Q、D152N、E153Q及びD112N/D114N)を導入した培養細胞(COS-1細胞、HEK-293細胞)では内向き整流K電流を記録できたが、D152N/E153Qを導入した細胞では記録できなかった。E153Q1個とD152N/E153Q変異体遺伝子3個を直列に連結した遺伝子(E153Q-(D152N/E153Q)3)を導入すると、内向き整流Kチャネル電流を記録できるようになった。D152N-(D152N/E153Q)3を導入した細胞では内向き整流K電流を記録できなかったが、(D152N)2-(D152N/E153Q)2を導入した細胞では、電流値は小さいが記録できた。したがってD152、E153の陰性電荷が細胞外Kイオンの結合とチャネルの活性化に関与していること、D152の場合は1つでよいが、E153の場合は2つ以上必要であることがわかった。また、野生型及び内向き整流性が弱いD172N/E224Sを導入した細胞でoutside-out法で電流記録を行うと、細胞外Kイオンがなくても外向き電流を記録することができた。細胞内から流出するKが細胞外結合部位に結合し、チャネルを活性化できると考えた。
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