体温のホメオスタシス調節は神経系で行われているにも関わらず、それに関する理解は断片的なものに限られている.とくに体温調節における温度感受部位、また求心路、遠心路の接点として重要な視索前野からの遠心性神経回路については情報がほとんど欠如していた.最近申請者らはラットの個々の体温調節効果器反応に関わる遠心路を解析する一連の研究を行った.その結果、遠心路内における視床下部背内側核(DMH)の重要性が明らかになってきた.つまり、1)DMHの興奮性アミノ酸による刺激でふるえ、非ふるえ熱産生、皮膚_管収縮など体温上昇反応が起こる.2)寒冷曝露したラットのDMHにFos蛋白が発現し、これが視索前野の加温で抑制される.本年度は、DMHは非ふるえ熱産生に関係する中脳中心灰白質(PAG)に出力を送る、という仮説を検証することである.実験はすべてWistar系のラットを用いた.ネンブタール麻酔下でPAGに逆行性トレーサであるCholera toxin-b (CTb)を注入する.3〜7日の生存期間の後、本実験として高温(35℃)あるいは低温(10℃)の環境温に1時間暴露を1時間行い、温度刺激終了30分後に環流して脳を取り出す.そしてFosとCTbの免疫組織学的二重染色を行う.寒冷曝露時のみ両方に染まったDMHニューロンがみられ、これはCTb注入部PAG位に投射し、かつ皮膚から冷信号を受けていると考えられる.来年度はこれらのニューロンがどのような入力を他の視床下部から受けるかを検討する.
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