生活習慣病に係わる末梢の時計機能が視交叉上核からの支配様式を明らかにするために、視交叉上核からの時計出力を伝達する物質を明らかにした。交感神経の可能性としては、神経毒の6-OHDAの投与による、末梢臓器の時計遺伝子発現のリズム性消失を調べた。また、これらの末梢臓器のノルアドレナリンやアドレナリンの含量にサーカディアンリズム変動があること、視交叉上核破壊動物ではこのリズム変動が消失することを明らかにした。さらに、視交叉上核を破壊による末梢臓器の体内時計遺伝子のリズム性発現低下動物に、毎日一定時刻にアドレナリンを投与することにより、末梢臓器で消失していた体内時計遺伝子のリズム性を再び取り戻すことで、交感神経系が末梢の時計遺伝子の同調に重要であることが証明できた。次に肥満や糖尿病状態のマウスの時計遺伝子発現変化を調べた。db/dbの2型糖尿病モデルマウスあるいは、高脂肪食投与による肥満マウスの、肝臓の体内時計遺伝子発現リズムは、振幅が減弱しており、Pai-1遺伝子発現もリズム性を失い、一日中高発現状態であった。運動を負荷すると、インスリンや血糖の異常値が改善してくると共に、時計遺伝子発現、Pai-1遺伝子発現いずれも正常値に回復した。また高コレステロール食により、Pai-1遺伝子発現のリズム性が強調される様に増大した。この作用は肝臓においてのみ見られ、臓器特異性があった。このように生活習慣病になると、体内時遺伝子発現に異常が見られ、またその下流遺伝子であるPai-1の発現にも異常が見られ、生活習慣病になると体内時計に異常を来たし、そのことが下流遺伝子の機能を通して、時計ホメオスターシスの異常をもたらすことが分かった。
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