研究概要 |
心筋エンドセリン-1(ET-1)遺伝子の発現増大のメカニズムの詳細は,不明な点が多い。 一方,PPAR-αは核内レセプターの一種であり,血管の炎症過程においてNFκBやAP-1によって制御を受ける遺伝子の発現を抑制することが知られているAP-1は心肥大における重要な分子でもあるが,心肥大過程におけるPPAR-αの活性化との関連についての詳細は不明である。本研究にてPPAR-α活性化と心筋ET-1遺伝子発現増大のメカニズムについて検討した。PPAR-α活性化薬であるフェノフィプレート(10μM)は,培養心筋細胞においてET-1刺激による細胞径の増大・蛋白合成・c-Jun mRNAの発現増大を,有意に抑制した。フエノフィプレートはc-JunおよびJNKのリン酸化レベルを抑制したが,ERKのリン酸化は抑制しなかった。フェノフィプレートは,ET-1刺激によるET-1遺伝子の発現を抑制し,またET-1遺伝子5'上流領域をレポーター遺伝子としたルシフェラーゼアッセイにおいても,ET-1刺激によるルシフェラーゼ活性の増加をFENは有意に抑制した。ET-1またはPMA刺激によるAP-1プロモーター活性の増加もフェノフィプレートは有意に抑制した。ゲルシフトアッセイにおいて,フェノフィプレートはET-1またはPMA刺激によるAP-1のDNA結合活性の増加を抑制した。以上より,PPAR-αの活性化はAP-1の活性化を抑制することによりET-1による心肥大を抑制するが,それは,JNK pathwayの抑制を一部介していることが示唆された。
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