研究概要 |
心筋エンドセリン-1(ET-1)遺伝子の発現増大のメカニズムの詳細は、不明な点が多い。一方、PPAR-αは核内レセプターの一種であり、血管の炎症過程においてNFκBやAP-1によって制御を受ける遺伝子の発現を抑制することが知られている。AP-1は心肥大における重要な分子でもあるが、心肥大過程におけるPPAR-αの活性化との関連についての詳細は不明である。本研究にてPPAR-α活性化と心筋ET-1遺伝子発現増大のメカニズムについて検討した。PPAR-α活性化薬であるフェノフィブレート(10μM)は、培養心筋細胞においてET-1刺激による細胞径の増大・蛋白合成・c-Jun mRNAの発現増大を、有意に抑制した。フェノフィブレートは、c-JunおよびJNKのリン酸化レベルを抑制したが、ERKのリン酸化は抑制しなかった。フェノフィブレートは、ET-1刺激によるET-1遺伝子の発現を抑制し、また、ET-1遺伝子5'上流領域をレポーター遺伝子としたルシフェラーゼアッセイにおいても、ET-1刺激によるルシフェラーゼ活性の増加をFENは有意に抑制した。ET-1またはPMA刺激によるAP-1プロモーター活性の増加もフェノフィブレートは有意に抑制した。ゲルシフトアッセイにおいて、フェノフィブレートはET-1またはPMA刺激によるAP-1のDNA結合活性の増加を抑制した。以上より、PPAR-αの活性化は、AP-1の活性化を抑制することによりET-1による心肥大を抑制するが、それは、JNK pathwayの抑制を一部介していることが示唆された。 ET_A受容体選択的拮抗薬YM598の長期投与が慢性心不全の運動耐容能の低下を改善するかどうかをトレッドミル運動負荷試験により検討した.予めトレッドミルに馴化させたラットを用い,冠動脈結紮による心筋梗塞後心不全(CHF)モデルラットを作製した.梗塞の急性期を過ぎた術後10日よりYM598 1mg/kgを約25週間,1日1回反復経口投与した.YM598投与後20週ならびに24週においてトレッドミル運動負荷試験を実施した結果,YM598はCHFラットにおいて減少した走行時間を延長させた. 本研究より、エンドセリン遮断薬は、肺高血圧、心不全、高血圧、狭心症、動脈硬化症などの治療薬として有用であることが判明した。
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