本研究は骨格筋の形成機構を、その過程にかかわる膜分子および細胞内極性を有する分子の網羅的検索を中心に明らかにしようとするものである。 まず、自立的に筋管を形成するマウス筋芽細胞株C2に、筋分化に必須な転写因子myogeninのプロモーター支配下にGFPを発現させるプラスミドを導入、筋分化を誘導すると、早期に一過的にGFPの発現が見られる。これを用いて、GFP-positive細胞をFACSで分取し、その画分の細胞で発現する膜蛋白質に対するモノクローナル抗体をスクリーニングした。その結果、筋分化に際して初期に活性化され、なおかつ筋管形成がはじまっておらず筋特異的ミオシン蛋白質などの発現活性化もおこっていない、形態学的にも生化学的にも分化初期の細胞で活性化される膜蛋白質に対する抗体を多数とることができた。その中から筋発生過程・筋再生過程で活性化されるなどのいくつかの基準を満たすものを選び出し、結果的に3クローンに絞ってさらに検討することになった。一方、筋芽細胞の分化前後のmRNAを用いてサブトラクションをおこない、そのライブラリーから約30個の機能新規のcDNAクローンを得た。シリコスクリーニングにより、膜分子をコードするものに絞り込み、その中で筋形成時に発現が高く、成長後は発現が抑制されるものに関して、全長をクローニングした。さらに、cDNAをGFPタグとの融合蛋白質を発現できるベクターに組み込み、細胞膜での発現を確認した。siRNAによる発現阻害を試みたが、筋形成への効果はcell non-autonomousであることが示唆された。
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