核内レセプターが、脂質や脂溶性ビタミンの吸収に必要な成分である胆汁酸に反応し、胆汁酸代謝を調節していることが明らかになった。核内レセプターによる胆汁酸代謝調節機構を解明するために、胆汁酸に応答する核内レセプターFXR、PXR及びVDR、脂質及び脂溶性ビタミンに応答するLXR、PPAR、RAR及びRXRに対する新規リガンド化合物の探索を行った。 核内レセプターのリガンド依存性転写誘導活性を評価するために、(1)全長核内レセプターとコンセンサス結合領域を含んだルシフェラーゼレポーターを用いる系、(2)GAL4-キメラレセプターを用いるmammalian one hybrid系、(3)GAL4-コファクターとVP-16-核内レセプターを用いるmammalian two hybrid系を構築した。 上記の系を用いて、胆汁酸によって消化吸収が制御されている植物ステロールの核内レセプターに対する効果を検討した。その結果、エルゴステロールの誘導体にLXRを活性化する作用のあることを見出した。このエルゴステロール誘導体をマウスへ経口投与したところ、小腸選択的にLXRの標的遺伝子であるATP結合カセットトランスポーターの発現を誘導して、コレステロールの吸収を抑制した。非ステロイド性合成LXRアゴニストの投与で見られる高中性脂肪血症は、エルゴステロール誘導体の投与では認めなかった。実験結果は、植物ステロールまたはその代謝産物がLXRの活性化を介して小腸選択的にステロール代謝を制御する可能性を示唆している。 二次胆汁酸リトコール酸誘導体のVDR及びFXRに対する効果を検討した結果、リトコール酸の3α-水酸基の修飾により、VDRとFXRに対する効果に選択性が生じることを見出した。胆汁酸とこれらの胆汁酸受容体との構造活性相関を解析することは、新規生理的リガンドの同定や核内レセプターの分子機能解析へ応用できる。
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